NCEAとは

ニュージーランドの高校では、日本の高校1年生にあたるYear 11以上の3学年を対象に、NCEAという制度を使って授業が行われている。

NCEAはニュージーランドの生徒や保護者でも、理解するのに時間がかかるくらい、お世辞にもシンプルな制度とは言えない。でも、一度理解すると、なかなかうまくできた制度だ。

どこがシンプルでないかというと、基本的な制度に、「それに加えて」とか、「ただしこの場合は」とか、いろんな細かいルールがたくさんあるところだろう。一度、「なるほど」と理解しても、「さらにこんなことも知っておく必要がある」とか「違う場合がある」ということがあとから出てきて、生徒も保護者もそれに少し混乱する。

また日本の高校の制度とは基本的なところから大きく違う部分があるので、日本の学校教育に慣れている方にはさらにわかりにくいと思う。

今日はこのブログで、NCEAをできるだけわかりやすく説明してみたい。

NCEAはThe National Certificate of Educational Achievement の頭文字をとったものだ。

日本語に直すと、National=国、Certificate=資格、Educational=教育の、Achievement=到達、だから、NCEAとは、「高校の教育における到達度をもとにした国の資格」だと言える。

ここが日本の高校と大きく異なる点の一つで、NCEAはあくまでも「国の資格」であることだ。NCEAを取得するというのは、高校の授業を受けることで国の資格を取る、ということだ。

そして、この国の資格は、大学やポリテク、専門学校への入学の基準にも使われるし、就職するときにも使われることもある。

到達度をもとにしているので、評価は基本的には絶対評価だ。一生懸命勉強していい成績が取れれば、それが資格にも反映される仕組みにもなっている。

NCEAには、Level 1、Level 2、Level 3 の3つのレベルがある。

例えば、English Level 1、Mathmatics Level 2、Physics Level 3 などがあり、各科目にそれぞれLevel 1からLevel 3 までがある。

基本的には、Level 1の科目は日本の高校1年生にあたるYear 11で履修し、Level 2 はYear 12、Level 3 はYear 13で履修する。

ただし、英語を第二言語とする日本からの留学生などの場合は、English Level 1 をYear 12で履修することもよくある。つまり、学年とNCEAの各科目のLevel は一対一で対応いるわけではなく、それぞれの生徒の到達度に応じてフレキシブルな履修が認められている。

もちろん、Year 11でMathmatics のLevel 2 を履修することもできるので、優秀な生徒が一つ上のLevel の勉強をすることも可能だ。

具体的には、NCEAという資格を取得するというのは、NCEAのLevel 1~Level 3 までの科目の単位を取得していくことだ。

基本的には、各Level で80単位以上を取得すれば、そのLevel の資格が取れる。

例えば、NCEAのLevel 1 の科目を何科目か履修して、合計80単位以上取得すれば、NCEA Level 1 という国の資格が取れる。

具体的には、NZQAという国の資格を統括する機関に以下のように書かれている。

Level 1 の資格取得には、Level 1 以上から80単位以上。
Levl 2 の資格取得には、Level 2 以上から60単位と、Level 1 以上から20単位以上。
Level 3 の資格取得には、Level 3 以上から60単位と、Level 2 以上から20単位以上。

従って、Level 2の取得に必要な80単位のうち20単位は、レベル1で取得した単位からそのままスライドさせることができる。

例えば、Level 1 で80単位を取得した場合、そのうち20単位がLevel 2 にも加算され、あと60単位をLevel 2 以上で取得すれば、80単位取得したことになる。

これは、Level 3 にも同じ計算が適用される。

実質Level 1 から順番に取得していく場合、Level 2とLevel 3 では各60単位を取得すれば、Level 1からLevel 3 までの資格が得られることになる。

そしてそれに加えて、NCEAのLevel 1、Level 2、Level 3 の資格を取るためには、Level 1 の指定されたLiteracy とNumeracy の科目で、各10単位ずつ、合計20単位を取得する必要がある。

つまり、Level 1 で合計80単位の内、10単位をLiteracy、10単位をNumeracy の指定科目での単位取得をすることで、NCEAのLevel 1の資格が取れる。

簡単に言えば、何でもいいから80単位というのではなく、少なくともLiteracy とNumeracy の指定された項目で20単位の取得が必要だということだ。

単位取得をするためには、各科目で課題を提出したり、授業中に行われる試験を受けたりする(Internal Assessments)ことに加えて、学年末の全国統一試験を受験する(External Assessments)ことでも、単位取得ができる。

単位は、Standard と呼ばれる各Level各科目の履修項目ごとに単位数が決まっていて、その項目で一定以上の成績をとれれば、その項目の単位数を得ることができる。

例えば、English Level 1 の「Produce creative writing」の項目(Sandard)は、3単位(Credits)取得できる。

そして、単に単位を取得できるだけではなく、それぞれのStandard で成績に応じて評価が与えられる。

基本的には、次の4つの評価だ。

Not achieved (N)
Achieved (A)
Merit (M)
Excellence (E)

Not Achieved は不合格で、その他の3つの評価は、成績に応じて与えられる。

興味深いのは、各課題が出されるときに、その課題での評価の基準がきちんと生徒にあらかじめ示されることだ。

例えば、先ほどのEnglish Level 1 の「Produce creative writing」の項目(Sandard)では、それぞれ以下のような評価基準があらかじめ示されている。

Achievement
: Develop and structure ideas in creative writing.
: Use language features appropriate to audience and purpose in creative writing.

Achievement with Merit
: Develop and structure ideas convincingly in creative writing.
: Use language features appropriate to audience and purpose with control in creative writing.

Achievement with Excellence
: Develop and structure ideas effectively in creative writing.
: Use language features appropriate to audience and purpose with control to command attention in creative writing.

もしExcellence の成績を取りたいのなら、ここに書かれてある基準に沿って課題を出せば、Excellence が取れる可能性がある。

生徒の中には、Excellence を狙う人もいれば、最初からAchievementが取れればいいという人もいる。それぞれの目標に応じて、課題に取り組めばいい。

そして、MeritとExcellence でそれぞれの項目(Standard)の単位を取得できた人の中には、今度は、Certificate endorsement、Course endorsement と呼ばれる、高い評価を狙る人もいる。

Certificate endorsementは、NCEAの各Level の評価で、最低80単位必要な内の50単位以上をExcellence で取れれば、そのLevel のExcellence Endorcement を得られる。Meritも同様だ。

例えばLevel 1 で取得した80単位の内、50単位以上がExcellence ならLevel 1 の資格をExcellence で取得したことになる。

Course endorsementは、各Level 各科目の評価だ。例えば、English Level 1 で取得した単位の内、14単位以上をExcellence で取得すれば、English Level 1 のCourse endorsementが得られる。Meritも同様だ。

ただし、14単位の内、少なくとも3単位をExternal Assessment(全国統一試験)で、少なくとも3単位をInternal Assessment(授業中の課題提出)で取得する必要がある。

単位が足りない人は、科目の担当の先生の判断で、学年末にさらに課題をだしてもらってそれを修了することで単位を取得することもできる。

NCEAはニュージーランドの大学の入学最低基準(University Entrance =UE)にも利用されていて、基本的には以下のようになっている。

NCEA Level 3 を修了
NCEA Level 3 の指定された3科目で、それぞれ14単位以上取得
NCEA Level 2 の指定されたLiteracy の科目で、Reading 5単位以上、かつWriting 5単位以上取得
NCEA Level 1の指定されたNumeracy の科目で、10単位以上を取得

「指定された科目」は毎年見直されるので年によって多少異なるけれど、一覧がNZQAのウエブサイトに掲載されている。

UEはニュージーランドの大学への入学最低基準だから、UEが取れたからといって、希望する大学の学部に誰もが入れるわけではない。

大学や学部によっては、Guaranteed Entry Score (GES)というスコア制度が設けられていて、NCEAのLevel 3 の取得単位と成績によってスコアを計算し、一定以上のスコアの取得が入学基準になっているところもあるし、入学希望者が定員を越えた場合にはスコアによって入学が認められるところもある。

NCEAは、国の資格だから、例えば、Year 12まで学校に通ってNCEAのLevel 2 を取得するのに必要な単位をすべて取得すれば、Year 13まで学校にいかずにそこで高校をやめても、NCEAのLevel 2 の国の資格を持っていることになる。だから、その資格を使って就職することもできるし、ポリテクや、大学のファウンデーションコースに入学することも可能だ。

だから、NCEAを取得することは、高校中退という考え方が存在しないことを意味する。

NCEAについては、もう少し細かい情報もたくさんあるのだけれど、今から中学高校留学をする方や、現在NCEAを取得中の方にとっては、これでほぼ必要な情報はそろっていると思う。

文章だとわかりにくいところも多いので、同じ内容を動画にアップしました。

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https://kickoffnz.co.nz/inquiry/

NCEA
https://www.nzqa.govt.nz/ncea/

NCEA levels and certificates
https://www.nzqa.govt.nz/ncea/understanding-ncea/how-ncea-works/ncea-levels-and-certificates/

NCEA endorsements
https://www.nzqa.govt.nz/ncea/understanding-ncea/how-ncea-works/endorsements/

Standards
https://www.nzqa.govt.nz/ncea/understanding-ncea/how-ncea-works/standards/

University Entrance
https://www.nzqa.govt.nz/qualifications-standards/awards/university-entrance/

Approved subjects for University Entrance
https://www.nzqa.govt.nz/qualifications-standards/awards/university-entrance/approved-subjects/

Produce creative writing
https://www.nzqa.govt.nz/nqfdocs/ncea-resource/achievements/2019/as90052.pdf

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