混ぜるということ
先日何気なく料理番組を見ていたら、ボールの中に何か丸い小さなものを入れて、その上からどろどろした茶色いものをかけて混ぜ合わせていた。カメラはボールを大写しにしていて、料理を作っている人が何か言いながらボールの中の食材をひたすら混ぜていた。
それを見ていて思ったのは、混ぜるという行為は、下のものを上に上げる行為だということだ。単に横に移動させるのでもなく、ばらばらにするのでもなく、なんとなくくるくると回すのでもなく、下のものを上に上げないと、ものは混ざらない。
お寿司を作るときに炊いたご飯に寿司酢を混ぜる。よく言われるのは、「切るようにして」混ぜる、ということだ。切るようにして混ぜるとご飯がべたべたになりにくい。でも実際にやってみると、しゃもじを切るように動かしているだけでは炊いたご飯と酢はうまく混ざらない。切るようにしながらたまに下のご飯を上に上げてやらないと、酢がご飯に万遍なく渡らない。それはおそらく、酢が重力でご飯の間から下に下に移動しようとするからだろう。それを人の手で下から上に上げてやらないと混ざらない。
これは、寿司飯を作る時に限らず、また料理をするときに限らず、どんなときにも当てはまると思う。何かを混ぜようとするときには、自然や外部の力で下に移動したものを、人の手で上に上げてやらなければうまく混ざらないのだ。食材も、土も、空気も、水も、そして人も同じだ。
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