判断基準は、留学生にとってプラスになるのか

昨日のブログで留学生達とのランチパーティのことを書いたが、その中で、「弊社は留学生とその親御さん達に本当に恵まれている」と書いた。本当にそう思う。先日のランチはロトルアにいる学生だけが集まったが、オークランドやタウランガ、そして南島にいる、語学学校やポリテクニックに通っている学生達もみな、とてもいい学生達だ。

何がいいかというのは、会って話をしている時の雰囲気や、送ってくれるEmail の内容などから感じることも多いので、言葉で表現するのは難しいが、一言で言うと、留学生達がみんな前向きに自分で進んでいこうとしている、ということだろうと思う。

とは言え、みんな最初から留学中ずっとポジティブに前向きに、何もかもいい感じで留学生活を楽しんで、いろんなものを得ている、というわけではない。多くの留学生が、文化の違いに戸惑ったり、英語がなかなか伸びずに悩んだり、人間関係に煩わされたり、計画通りに進まなかったり、地元の学生とうまく行かなかったり、何らかのトラブルを抱えたり、ラグビー留学生が怪我をしたり、ステイ先とうまく行かなかったり、いろんな壁にぶち当たっている。でも、いろんなうまく行かないことがたくさんあっても、誰もが一つ一つそれらの問題を自分で解決して、前に進んで行っている。

それらの経験が、彼ら、彼女らに自信を与え、楽しそうな表情にさせ、友達や仲間を信頼し、人の気持ちを理解し、留学生活を楽しく充実したものにさせているのだと思う。もっと言えば、留学生活でいろいろとトラブルや悩みがあっても逃げずにそれらを乗り越えて来た、あるいは乗り越えようとしている留学生達だからこそ、今、楽しそうにみんなと話ができるのだと思う。

だからこそ、彼ら、彼女らのその笑顔に応えるためにも、弊社もきちんと身を引き締めて仕事をしなければならない。

私はニュージーランドに来てから約14年間自分でビジネスをやってきたが、うそをつかない、約束は守る、人をだましたりしない、という三つのことは最低限きっちりと守ってきた。これには自信がある。正直であろうとし過ぎて、目の前の利益を逃したこともある。でもそれはしょうがないと思っている。うそをついたり、約束を破ったり、人をだましたりしてまで、利益を上げようとは思わない。この姿勢が、会社にとって、また私の家族にとってはたしてプラスになっているのかどうか、それはなんとも言えない。でも他人に、甘いと言われようが、これからも最低限この姿勢は崩さないでいこうと思っている。

そして、留学生やその親御さんに対してきちんとやらなければならない点をさらに挙げるとすれば、それは、「留学生にとってプラスになるのかどうか」という基準を常に判断の中心に置く、ということだ。留学生に集まってもらってランチパーティをするのも、私自身も楽しんでいるということもかなりあるが、留学生達にとってプラスになると思うからだし、高校留学生の親御さんにEmail で連絡を取るのも、親御さんに安心してもらって、その安心感が留学生にとってプラスになるだろうと考えるからだ。

だから逆に、個々の留学生にとってプラスにはならないであろう、と判断することに対しては、たとえ親御さんや留学生本人の希望が強くても、とてもえらそうだけれども、No、とお伝えせざるを得ない。もちろん、No、と言う限りは、その理由を丁寧に何度もご説明するし、No、と言った結果の責任は自分達でかぶるつもりでもいる。

だからこそ、常日頃から留学生と話をして、親御さんとも連絡を取り、学校の先生やスタッフともいろんな情報交換を行い、学校を訪問し、また、ニュージーランドの最新の正確な情報を収集し続けている。そうすることによって、それぞれの留学生の性格や考え方を知り、親御さんの最終的なご希望を考え、それぞれの学校の特徴をつかみ、何がそれぞれの留学生にとってプラスになるのか、何がそれぞれの留学生にとってプラスにならないのか、を的確に判断したいと思っている。

例えば、ある高校留学生が放課後習い事をしたい、と希望したとする。それ自体はいいことだと思うし、条件が合えばやりたいことをやるのはいい経験になると思う。しかし、夜暗くなってからステイ先に戻るときの交通手段の確保とその安全性が確認できない限りは、本人や親御さんがどうしてもやりたいと言っても、Yes、とは言えない。なぜなら留学生の安全確保ができないことは、留学生にとってはプラスにはならないからだ。

また例えば、ある高校留学生の親御さんが、留学生である自分の息子さんについて、現地の高校生達が彼にもっとフレンドリーに接するように、留学先の学校の先生から現地の学生に指導を与えてほしい、と希望したとする。留学を始めてすぐの留学生が現地の学生とうまく交流できないのを何とかしてやりたい、という親御さんの気持ちはよくわかる。しかし、学校が現地の学生を集めて、留学生の○○君にもっとフレンドリーに接してやってほしい、と指導するというのは、うまくいく可能性も確かにあるが、逆効果になるリスクもある。先生の指導に素直に従って友達になってくれる学生もいるだろうが、中には先生に注意されたのは○○のせいだと、留学生に対して反発を感じる学生もいるかもしれない。それらの可能性は、学校の状況やその留学生自身の性格によっても異なってくるので、状況をしっかりと見て判断しなければならない。

でももし少しでもリスクがあり、そのリスクによる影響が留学生にとってプラスにはならないと最終的に判断できるのであれば、その親御さんのご希望には、大変申し訳ないがNo、と言わざるを得ない。そして、No、と判断した状況と理由の説明を、本人と親御さんにきちんと何度も行って、納得してもらうしかない。

親御さんによっては、留学生本人と親が希望しているにもかかわらず、現地のエージェントがNo、というとは何事だ、と、ご希望に反する判断をしたこと対してお怒りの言葉をいただくかもしれない。また単に、このエージェントは何もサポートをしてくれない、と言われるかもしれない。

それでもやはり弊社は、個々の留学生にとってプラスにはならないであろうと、状況をよく見て判断した事柄については、ご希望は承知していますがそれはしないほうがいいです、と申し上げようと思っている。なぜなら、留学生にとってプラスにならないとわかっていることを、そうですか、やりましょう、と簡単には言えないからだ。

他のエージェントさんの中には、留学生にとってプラスにならない可能性があっても、お客様である親御さんや留学生の希望があればそれを最優先して行う、というところもあるだろう。その結果、留学生にとってプラスにならないことが起こっても、親御さんと留学生の希望を優先して仕事をするのがいい、という判断もビジネスとしてはあるとは思う。極端な話を言えば、留学生にとってプラスでないことが起これば、学校やステイ先が悪かったのです、と言って転校させる、というエージェントさんもいるのかもしれない。

でも弊社は、たとえNo とお伝えしたときに親御さんや留学生のお怒りをかっても、何もサポートしてくれないと言われても、やはり個々の留学生にとってプラスにならないと判断できることを、わかりました、ご希望なのでやりましょう、と簡単に言うことはできないと思っている。

正直に、誠実に、そして、「留学生にとってプラスになるのかどうか」という基準を常に判断の中心に置く。それが私たちのやり方であり、留学生にとってはそれが最終的に最もいい方法だと思っている。

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