ニュージーランドの便座は冷たい
NZはもうすぐ冬になる。ロトルアでは、例年4月末になると暖房を使い始める。
最近はニュージーランドでもエアコンが普及し始めているが、まだまだ少ない。暖炉のある家では、薪を買ってきて乾かして、庭にある薪の小屋から運んできて燃やして暖める。薪を燃やし始めてから部屋が暖まるまで20分はかかる。寒い外から帰ってきても、薪を入れて火をおこして暖かくなるまでは、当然部屋は寒い。
暖炉で火を燃やしても、トイレは寒い。そして、便座は冷たい。電気で温かくしてある便座などニュージーランドでは見たことがない。真冬の便座はかなり冷たい。氷で作った椅子に座るくらいの気分だ。どこかの雪祭りに展示されている便座のほうが温かいのではないかと思うときもある。座るたびに「ひゃー」と言う。座る前には覚悟がいる。しばらく座っていれば温かくなるが、だからといってずっと座り続けるわけにはいかない。用が済めば速やかに退去する。名残惜しいがしょうがない。
ロトルアの公共交通機関はバスだけだ。朝6時に始発が走り出し、夕方6時頃には終バスが出てしまう。平日は30分に1本、日曜日は1時間に1本だ。祝日はドライバーさんも祝日なので、バスは動かない。ドライバーさんのいないバスなどただの鉄の塊に過ぎないことを実感する。30分に1本のバスでも、時間通りに来ない。いつも遅れるバスなので、ゆっくりとバス停に行くと、時間よりも早く出てしまっていることもある。一言で言えば、バスの時刻表は「おおよそこのくらいにバスが来ます」という一つの目安に過ぎない。私の腹時計のほうがよっぽど正確だ。
ロトルアにはコンビニエンスストアなどない。デイリーと呼ばれるショップがあるが、ほとんどコンビニエンスではない。だからデイリーと呼ばれるにとどまっている。彼らは夜7時頃には当たり前のようにシャッターを下ろしてしまう。
突然何の前触れもなく、停電することが、1年に2回ほどある。運がいいと1時間ほどで復旧するが、長いときは3時間ほど停電していたこともある。しかも停電が終わった後でも、何のお詫びも連絡もない。事前に停電が予告されたこともあった。その時は2時間の停電の予定が5時間停電していた。予想通りだった。そんなときでも、停電の後何のお詫びも連絡もない。
こんなニュージーランドでも、日本から来た留学生や旅行者は、すばらしいところだ、是非住みたい、と言う。短期で滞在する方はもちろん、長期滞在した後、また何度もニュージーランドに来ている方も、ニュージーランドでいろんな経験をして、その上でニュージーランドにずっと暮らしたいと言う。私も、ニュージーランドで14年ほど暮らしているが、ここの生活がとても気に入っている。
ボタン一つで部屋が暖かくならなくても、便座が冷たくても、バスがなかなか来なくても、コンビニがなくても、突然停電しても、何不自由なく普通に生活していくことができるし、楽しく暮らすことができる。
そして今日もニュージーランドの人たちは毎日、「ひゃー」と言っている。
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