レスリング落選

2020年のオリンピックから、レスリングが除外される可能性がある、というニュースが、今朝の新聞に掲載されていた。

レスリング界には衝撃が走っただろうと思う。オリンピック出場やオリンピックで勝つことを目標にしてレスリングをしている若い選手達も、「えっ?」という感じだろう。2020年のオリンピックといえばわずか7年後だ。だから、今の高校生や大学生でオリンピックを目指しているレスリングの選手達にとっては、大きな大きなニュースで、人生を大きく変えるかもしれない出来事だ。

ニュースをよく読むと、「ロンドン五輪で実施された26競技のうち、2020年夏季五輪でも行われる25競技を決め、レスリングが外れた。」となっている。また、「IOCは5月の理事会(ロシア・サンクトペテルブルク)で、復活を目指す野球・ソフトボールや空手など七つの候補に、今回外れたレスリングを加えた8競技の絞り込みを行い、最終的に9月の総会で20年五輪で追加実施される1競技を決める。総会で追加されない可能性もある。」とのことだ。

つまり、昨年のオリンピックで行われた26競技のうち、必ず一つは今回の除外対象として選ばれることは決まっていたということだ。言い換えれば、オリンピック競技はその競技が数年後のオリンピックで行われるかどうかは、100%確実ではない、ということだ。もっと簡単に言えば、今自分がやっている競技が、数年後のオリンピックで行われない可能性もある、ということだ。

しかし、オリンピックで勝つためには、高校生、中学生、ひょっとしたら小学生の年齢から、競技人口を増やし、指導者を育成し、施設を作り、国内大会を実施し、スポンサーを見つけ、という、とてつもない時間とお金と人を使った道のりが必要だ。実際に、2016年のオリンピックからは7人制ラグビーが男子女子ともに正式種目になるけれど、日本でもニュージーランドでも、すでに本格的な選手育成と強化が始まっている。

ここに大きな矛盾がある。オリンピックで勝つためには、長い時間と大きなお金、たくさんの人が必要で、時には10歳未満の選手から育成していかなければならない。でも、その競技がオリンピックで行われるかどうかは、数年前に決定する。今回のレスリングのように、小さいときからオリンピックを目指して競技を続けてきた選手が、いきなりその夢を絶たれる、ということも十分起こり得る。

また、時代はどんどん変っている。今までのようにテレビ放映を考慮した競技選択ではなく、ネットでの中継にシフトした競技選択になっていく可能性もある。だから、今まではテレビ放映に向かない、とか、テレビ放映を考えたときにスポンサーがつきにくい、という理由で除外されていた競技が入ってきて、今までのいわゆる「テレビ的」である競技が外れていくこともあるだろう。

子どものときから「オリンピックに出て勝つことが夢だ」という人もたくさんいるだろう。その夢に向かって、生活の全てをかけてきた人もいる。でも、オリンピックで実施される競技は、わずか14人のIOC理事の投票で決まるという。

選手達の子どものときからの大きな夢と関係者の長いの道のり。それに対する、オリンピック競技採用決定方法とその時期。そのあまりのギャップの大きさに、なんとも言えない気持ちになった。

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