補助線が引かれるまでは

留学生活ではいろんなことがある。

特に長期の留学生活では、楽しいことやうれしいこともたくさんあるけれど、つらいことやうまくいかないことも必ずある。

なんか楽しくない。なんかうまくいかない。そして、どうすればそれが上向くのか、わからない。

中学校の数学の幾何の問題に、複雑な図形のある部分の角度を求めるものがあった。内角の和とか、対角、対頂角、平行線とか、そんな知識を総動員して、うんうんうなって何時間も考える。けれどいくら考えても答えが出ないこともあった。

そんなとき、先生がヒントの補助線を一本引いてくれると、不思議なことにそれまで見えてなかったものが一気に現われてきた。そして3分で答えが見つかった。

そんな経験をお持ちの方もいるだろう。

留学生活も同じだ。

うんうんうなって、ずっと考えて、答えが出ずにどうしようもないと思っていたところに、誰かが補助線を一本引いてくれることで、それまで見えてなかったものがぐーっと立ち現れてくる。そしてすべてが見えて、答えが見つかる。

でも、数学でも留学生活でも、最初から補助線が引かれていたら、面白くない。補助線のない状態で、自分でうんうんうなって、考える。それで頭がよくなるし、いろんな知識を整理できるし、問題に対する取り組み方も身につくし、集中力や根気も養われる。

そしてその後に引かれる一本の補助線。

そんな経験、そんな時間。それがいいのだ。

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