別れについて
卒業や転職、引っ越しや、そして留学もそうだけれど、誰かとの別れが必ずある。
2000年代に入る以前は、誰かとの別れは、距離的な別れはもちろん、もうあまり連絡も頻繁にとれないことが前提だった。
私がニュージーランドに移住した1997年は、まだ日本にいる友人もメールを使っている人がほとんどいなかったので、実質手紙しか連絡手段はなかった。
だから、Facebook が出てくるころまでは、古い友人と連絡をとる手段がほとんどなかった。一度「別れ」がおとずれると、もう二度と会えないくらいの思いがあった。
今はネットが普及して、小学生でもスマホを持つようになって、いつでもどこでも誰とでも簡単に連絡がとれる。
そして、それまでと「別れ」の意味が根本的に変わった。
卒業しても、転職しても、引っ越ししても、そして海外に留学しても、ずっと誰とでもいつでも連絡がとれる。
留学に行くとき見送ってくれた友人に、留学先の空港に到着したら、「ついたよ!」とメッセージを送れる。もちろん日本の友人もすぐに返事をくれる。
これが今の「別れ」だ。
ネット以前の別れが、もう二度と会えないくらいの重さがあったのに対して、今の別れは、フィジカルな距離的な別れだけを残して、後は「別れ」てない。いつでも連絡が取れて、いつでもビデオ通話ができて、いつでも気持ちを伝えることができる。まるで今目の前にその人がいるかのように。
そう考えると、今の「別れ」は、それまでの「別れ」とは全く違うものだろう。もう二度と会えない、もうしばらく連絡さえとれない、そんな思いを胸にさようならを言う。その経験が欠けている。
言い換えると、それは絶対に別れられない「別れ」だ。今は「別れ」のない時代なのだ。
それが、今のデジタルネイティブ世代にどんな影響を与えるのか。これから少しずつわかってくるだろう。
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