親御さんの望みは果てしない

まだ十代の息子さん娘さんを、長期の留学に行かせるのは、親御さんはすごく不安が大きい。

そして不安だけではなく、せっかく留学に行くのだからと、息子さん娘さんに求める希望もどうしても大きくなる。

せっかく行くのだから、英語力はネイティブ並になってほしい、現地の友達をたくさん作ってほしい、加えて学校の英語以外の科目もきちんと単位を取ってほしい、その上できればいい成績を残してほしい、ホームステイファミリーと本当の家族のように仲良くなってかわいがられてほしい、たくさんの成功体験をして自信をつけてほしい、でも、若い時にしかできない失敗もしてそこからいろんなことを学んでほしい、親元を離れて親のありがたさを身にしみて感じてほしい、でもホームシックにはならないでほしい、スポーツもきちんとトレーニングをしてほしい、そして上のチームで試合でも活躍してほしい、できれば地域の選抜なんかにも選ばれてほしい、中学生や高校生としての教養を身に付けてほしい、そして下の人に優しく上の人のいうことをよく聞いてほしい、留学の経験を通してすばらしい大人の男性女性に成長してほしい、グローバルな感覚を身に付けてほしい、でも日本の人達と違和感なくつきあえるだけの処世術も持っていてほしい、将来は世界中で活躍できるスキルを身に付けてほしい、卒業後は海外の大学や大学院に進学できる能力をつけてほしい、でもいずれは日本に戻ってきて親の面倒を見てほしい、肉体的にも精神的にも強い人間になってほしい、などなど。

お父さん、お母さんの希望は果てしない。

でも、お父さん、お母さん、これ全部は、無理です。

せっかく留学に行くのだから、日本で進学するのとは違う、日本で学校に行くよりももっと高いスキルや能力を身に付けてほしい、と親御さんが思うのは、もっともだと思う。長期の高校留学を終えて日本に戻ってきて、「これだったら、日本の高校に行ってもよかったね」と思うのなら、それはとても残念だ。

でも、あまり多くのことを望みすぎるのも考えものだ。留学スタート時は、ものすごい可能性とチャンスが目の前にあるので、その中のいくつかは、望んで努力すれば手に入るかもしれないけれど、親御さんの希望全てがかなうことはない。

若い留学生達は、親元を離れて他人と一緒に異文化の中で生活をするだけで、きっと何かを学んでいる。経験がすぐに目に見える形で表れるとも限らない。だから、一学年が終わって日本に一時帰国してきたときに、「ちょっと見かけが大きくなったなぁ」「精神的にたくましくなったなぁ」「少ししっかりしたかも」「強くなったように感じる」と親御さんが何か一つでも見つけられれば、それでいいのだと思う。

やはり、一番望むことは、元気で生活して、そして日本に戻ってくることだろう。日本に一時帰国してきた時に、笑顔で元気で帰ってきたのなら、とりあえずはそれで十分なのかもしれない。

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