家に帰りたいというだけがホームシックではない
長期の高校留学生達がニュージーランドで留学生活を始めた時、半数以上の人達がホームシックになる。
特に11歳や12歳で長期留学をスタートさせた留学生達は、初めて親元から長期間離れて暮らす寂しさや、言葉が通じないいらだち、文化の違いからくる戸惑いなどから、無性に、日本に帰りたい!と感じる。当然だと思う。
そして、日本の家族や我々に連絡して、「寂しい!日本に帰りたい!」とストレートに訴える。誰もがわかるホームシックだ。
でも実は、寂しい!日本に帰りたい!と言うだけがホームシックではない。
少し年齢が上がって14歳や15歳になってくると、家族にストレートに「寂しい!帰りたい!」とは、プライドがじゃまをしてなかなか言えない。留学に来る時にたくさんの友達や先生などに見送ってもらったことを考えると、なおさらだ。
そんな留学生達がホームシックになった時、いろんな形でそれを表現しようとする。
例えば、「学校で同級生にいじめられている」とか、「ホームステイを変わりたい」とか、「転校したい」とか、「質問しても、先生がちゃんと教えてくれない」とか、「友達が変な人が多い」などだ。
詳しく聞いてると、「友達が自分の名前を歌にしてはやし立てる」とか、「ホームステイの食事に嫌いなものが出てくる」とか、「わからない所を聞きに行ったら、先生が後で教えてあげると言ってそのまま教えてもらえない」とか、「この学校は自分には合わない」とか、「学校でいつもちょっかいをかけてくる人がいる」などと言う。
私達は基本的には、留学生がそう言うのならそうなのだろうと、まずは考えることにしている。頭からそれはホームシックだとか、そんなことできないとか、否定はしない。そして、留学生達の話の内容を前提に、ホームステイや学校に直接話を聞いてみたり、見に行ったりする。
すると、いじめられているはずの留学生に対してとてもフレンドリーに現地学生が話しかけていたり、嫌な食べものは残してもかまわないとホストマザーがあらかじめ伝えていたり、先生が質問に対して答える準備をしていたり、クラスメイトがその留学生と友達になりたがっていたりする。
留学生の言っていることに間違いはない。けれど、その伝え方には多少バイアスがかかっていることがある。
そしてもう一度留学生とよく話をして、状況をよく確認して、なぜ留学生がそういうことを言うのかを考えて、そしてアドバイスをする。
すると、いじめられている、と話していた留学生がしばらくすると現地学生と一緒に楽しそうに遊んでいたり、ホームステイを変わりたいと言っていた留学生がホストファミリーと仲良く遊びに行っていたり、先生に対する不満を言わなくなったり、現地の学生とどんどん友達になったりし始める。
中には留学生が言うとおりの問題もあるだろう。でも、ホームシックをストレートに表現できない留学生もいるし、自分がホームシックであることに気付いていない人もいる。
いろんな人の話しをよく聞いて、状況をよく見て、判断して対処する必要がある。
以前、学校でいじめられていると言う留学生が、実はホームシックだったということがあった。その時日本の親御さんは、「うちの子は、日本に帰りたいとは一言も言ってないから、ホームシックではない」とおっしゃっていたけれど、「後から考えてみると結局あれはおっしゃる通りホームシックだったんですね」とわかって頂いた。
家に帰りたい!と言うだけがホームシックではないのだ。
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