LINE と言葉
人間、考えるときは言葉を使う。
「えっ、言葉以外で考えることもあるんじゃない?」と考えているときも、言葉を使っている。日常的に日本語を使っている人は日本語で、英語を使っている人は英語で考えている。
まだインターネットが普及する前は、多くの人が手紙のやり取りをしていた。手紙を書くときは、言葉で考えて、言葉で表現し、その言葉を考えながら推敲し、時間をかけて書き上げて、封筒に入れてポストに投函していた。インターネットが普及して、Email でやり取りをするようになっても、最初の頃は時間をかけて言葉を使ってEmail を書いていた。手紙がEmail という形式に変化しただけで、内容はあまり変らなかった。
でも携帯電話でメールができるようになってくると、言葉だけでは不便になって、絵文字を使うようになった。絵文字は日本語や英語などの「言葉」ではなく、正確に言えば「絵」だ。だから、それまで言葉で表現していた以外のことを表現できるようになった。
そして、スマートフォンが普及し始めて、LINE が出てきた。LINE は無料でスマホでやり取りができるというところが特徴なのではなくて、最大の特徴はスタンプと呼ばれるキャラクター、つまり、絵で表現できるところだと思う。私は日常的に使っているわけではないが、LINE でやり取りをするとき、こちらから相手に呼びかけると、まるで会話をしているくらいのスピードで返事が返ってくることも多いようだ。LINE では、言葉で考えて、言葉で表現し、推敲し、時間をかけて書き上げてから送信する、という手紙のような過程を踏まずに、反射的に返信をすることができる。つまり、考えた上で「言葉」を使うのではなくて、反射的な「感情」を伝えるのにとても便利だ。それがLINE の最大の特徴だと思う。、言葉ではなくスタンプを使って、継続的な「考え」ではなく瞬間的な「感情」を伝えることができる。
LINE は、無料でEmail やテキストメッセージが送れるサービスなのではなくて、今までと違う、感情を反射的に特定の人に向かって表現できる新しいサービスなのだと思う。だから、言葉で考えてコミュニケーションを取るという、手間と時間がかかる不便な方法ではなく、感情を即座に表現し会話する方法を取りたいときには、とても便利なツールなのだ。それは、ブログやフェイスブックなどの比較的オープンなコミュニケーションではなく、クローズドなコミュニケーションツールであるからできるのだろう。ブログで絵文字を多用しているのとLINE でスタンプを使うのとでは、受け取る側の印象が大きく違う。
これからのインターネットツールは、言葉で考えを表現してそれを言葉で受け取るパートと、言葉以外で感情を表現してそれを見て受け取るパートに、分かれていくのかもしれない。
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