ことばのちから

ニュージーランドは暑い日が続いている。小学生の頃、夏の授業中に「暑い~」と言うと先生に、「暑い暑いと言うな!よけいに暑くなる!」と怒られた。すかさず「寒い~。あれっ、先生、寒い~と言ってもまだ暑いよ~」と返す友達がいたが、「静かにしなさい!」とまた怒られただけだった。

当時は、「暑い時に暑いと言って何が悪いのか」と思っていたが、今になってみれば先生の言うこともよくわかる。確かに暑いときに「暑い~」と言えばよけいに暑く感じる。

言葉って不思議なもので、頭の中で考えているだけではなく、言葉に出して言ったり書いたりしてしまうと、その瞬間に何かが大きく変化する。

例えば、友達と2人で家で映画を観ていたとする。30分くらい観ていても一向に面白くなってこない時に、友達が「この映画、全然面白くないよね。」と言葉で言ってしまったら、その映画は全然面白くない映画として自分達の記憶に残ることになる。言葉にした瞬間に、その言葉が共通の認識となって、さらに事実となってしまう。

だから例えば、留学して一人で寂しいときに、「寂しい」とボソッと独り言を口にした瞬間に寂しさがどっとこみ上げてくるし、難しいことに挑戦しているときに「これ、私には無理だわ」と言葉にした瞬間に、やる気がすーっとうせていく。

「歯を食いしばれ」とか「弱音を吐くな」というフレーズは、私は個人的にはあまり使わないようにしているけれど、これらはきっと言葉の持つ大きな力がわかった上でのフレーズなのだと思う。

さらに言えば、勉強やスポーツをしているときに、「何でできないのか!」などと言葉で言われると「自分はこれができない」ということが事実として頭にインプットされるが、逆に「きっとすぐにできるよ!」などと言われると、「いつかはきっとできる」ということが事実になるし、共通の認識にもなる。

よく、夢を実現するためには、それを具体的にイメージするのがいいといわれるが、具体的にイメージするために、夢それ自体と夢の実現への過程を言葉で書くのも効果がある。なぜなら言葉にすることで、自分がそのような具体的な夢を持っていることが事実となるし、その夢や事実を今日の自分と後日の自分の共通認識にできるからだ。

言葉の力は想像以上にとても大きい。毎日毎日話している言葉、書いている言葉、そして目にしている言葉によって、生活が大きく変るし、人生も大きく変る。きっとその人自身も変るだろう。だから、頭で考えていることを言葉にする時には、よく考えて発する必要がある。口から出た言葉や書いた言葉によって、事実が変り、自分や周囲の人との共通認識が変るのだから。

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