他人が同意してくれるとは限らない

ニュージーランドではよく、「で、あなたはどうしたいの?」と聞かれる。

「今度の試験は受けても受けなくてもいいらしいのですが、受けたほうがいいでしょうか」「試合には出場できないと思うのですが、チームと一緒に行ったほうがいいでしょうか」「ステイ先では家事を手伝ったほうがいいでしょうか」などと留学生が聞いたとき、「あなたはどうしたいのですか」と必ず聞かれる。なぜならそれは質問をした人自身のことだからだ。

そして「試験は受けたくありません」「チームとは一緒に行きたいです」「家事を手伝うのは嫌です」などと答えると、「試験はできるだけ受けた方がいいと思う」「チームと一緒に試合に行くのはいいけれど、バスの定員があるので乗れないかもしれない」「家事はお皿を拭くだけでもいいので手伝ったほうがいい」などと言われる。

そうすると、「あなたはどうしたいのですかと聞いておきながら、私がこうしたいと言うと、それに対して反対の意見を言う」と、留学生達は感じる。

確かに、自分の意見や考えを求められた上でそれに対する反対意見を言われると、戸惑うだろう。でも、ニュージーランドでは、まずは当事者はどうしたいのかから話を始める。そしてそれを踏まえて、意見を求められた人が自分の意見を相手に伝える。

だから、何かを他人に相談すると、まずは状況の説明と本人の意見が求められ、それを踏まえた上で相談された人が自分の意見を伝える、という流れになる。相談された人が、相談者の考えていることを「おもんばかって」指示をしてくれたり、相談者の状況を「想像して」意見を言ってくれたりすることは、ほとんどない。相談された人は、できるだけ状況を把握し、相談者の意見を聞こうとする。相談を受けた人が何かを言うのはその後だ。

相談を受けた人も相手の意見を考慮しながら一所懸命考えて自分の考え、意見を言うので、当然、相談をした人の考えを否定するような言葉も出てくる。もし、相談をした人の言うとおりに「そうしたらいいよ」と言うだけなら、相談などしなくても、自分で思い通りにすればいい、ということだ。

そしてもし、自分の考えや意見に反対のことを言われてそれに同意できないのであれば、同意できない理由やさらなる自分の考え、意見を相手に伝える。

「で、あなたはどうしたいの?」と聞かれて、自分の考え、意見を伝えても、それに対する相手の考え、意見が反対のこともある。それで納得できないなら、また自分の考え、意見を伝える。それが「相談」であって、自分の考えや意見に賛同を得ることだけが目的であれば、誰にも相談せずに自分の思い通りにやればいいのだ。

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