人生最大のチャレンジの機会を奪わない

ニュージーランドの新学年が始まり、長期短期の高校留学生達が続々とニュージーランドに到着している。

高校留学生のほとんどは、初めて留学に来る人達だ。中には海外が初めてという人もいるし、アジア以外の国に行くのは初めてとか、旅行以外で海外に滞在するのは初めて、という人も多い。だから留学生達は、出発前はドキドキして緊張している。今から行く見も知らない土地での新しい生活。期待に胸を膨らませる一方で、どんなことが起こるのか全く予想もつかない不安を抱えて、日本を出発する。

そんな期待と不安が大きく入り交じった気持ちになることは、人生の中でも数えるほどだろう。特に十代でのそんな経験は、人生の中でも数少ないとても貴重な経験だ。だからこそ、その期待と不安をじっくりと留学生達自身で感じてほしいし、その気持ちをずっと忘れないように心に刻み込んでほしい。

何週間か、何ヶ月か、何年か経って、留学スタートの日々を思い出すと、「なんであんなことが不安だったりできなかったりしたのだろう」とみんな思う。そして、留学スタートの時の期待と不安を思いだし、留学生活で自分が大きく成長したことを実感する。

私たちは、留学生達にその期待と不安をじっくりと感じて味わってほしいし、せっかくの人生最大のチャレンジ、大冒険のスタートの時に感じること、その経験の全てを大切にしてほしい。そしてその人生で数少ない貴重な機会を、周囲の大人ができるだけ奪わないようにしたいと考えている。

だから、留学のスタートの時に一番大切なことは、「自分で一歩を踏み出す」ことだ。まずは自分で覚悟を決めてやってみる、自分でアクセルを踏む。それがとても大切で、後から生きてくる。最初に自分で一歩を踏み出したかどうかが、その後の留学生活、その後の人生にも大きな影響を与える。

もし最初のスタートから誰かを頼ってしまうと、それがあたりまえになって、なかなか抜け出せない。自分で一歩を踏み出すのはとても勇気がいるし、しんどいことだけれど、留学のスタートはそれができる人生の最もいい機会だと思う。

だから例えば、我々が近くで留学生を見ている時でも、まずは自分で英語で話をしてもらうようにしている。最初から全てを通訳することは、あえてしない。せっかくの人生の大きなチャレンジの機会を奪うことになるからだ。もし最初に我々が通訳をしてしまうと、次に相手に英語で話しかけられたときに、留学生は必ず我々の顔を見る。「えっ、今なんと言ったんでしょうか。わからなかったので通訳してください。」と訴えかける目でこちらを見る。そうなるとずっと通訳をしてしまって、最後には、我々とその相手が英語でずっと話すことになってしまう。それでは、何のために留学に来たのかわからないし、せっかくの人生一度の最大のチャレンジの機会を無駄にすることになる。

逆に我々も我慢をして手を出さずにじっと留学生に任せていると、彼ら彼女らは、身振り手振りも交えて自分で何とか伝えようとし始める。相手の顔を見て一所懸命話す。だから相手もじっと留学生の目を見て、何とか理解しようと努力する。それがほんとうのコミュニケーションだと思う。

そして、身振り手振りでも何とか伝えることができた、という最初の小さな経験が大きな自信となる。もちろん、伝わらなかった、と落ち込むこともあるだろう。また、適当にYes、 Yes、と答えて訳がわからないことになるかもしれない。でもそんな経験から学ぶこともたくさんある。周囲の大人が全て通訳をしてしまうことは、そんな経験を留学生から奪うことになる。

正直に申し上げれば、留学生をサポートする時には、できるだけ我々が通訳をしたほうが、サポートも楽で時間も短くて済む。だから我々はビジネスの費用対効果だけを考えれば、どんどん通訳をするほうがいいのだ。でも、我々はあえて留学生自身に一歩を踏み出す機会を提供しようと思う。なぜなら、留学は経験だ、と考えているからだ。

留学中の経験、失敗、悩み、不安、そして成功体験は、まさに、その時にそこでしかできないことだ。二度とその機会は巡ってこない。その貴重な機会を、我々も含めて周囲の大人ができるだけ奪わないようにしたいと思う。

失敗する前に、悩む前に、誰かが何とかしてほしいと思う親御さんもいるだろう。それも一つの方法かもしれない。でも、失敗し、悩み、そして考え、進んでいく。その経験が将来大きな糧になる。特に、留学スタート時の小さな経験の数々は、留学生の将来に大きな影響を与えるだろう。

そして、安全を確保しながら、留学生達にできるだけ多くの経験をしてもらい、留学中の失敗や悩みをどう成長につなげていくのか。そこをうまくサポートするのが、我々のプロとしての仕事だと思っている。

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